消化器病センター長
田中龍
今回、新宿つるかめクリニックのブログを担当します、消化器病センター長の田中龍と申します。 私自身のブログとしてはだいぶ空いてしまいました。 前回まではIBD(炎症性腸疾患)に関してお話させていただきました。
【前回までのブログ】
・~炎症性腸疾患とは~
・~炎症性腸疾患と新型コロナ~
・~炎症性腸疾患の人の生活~
・~新型コロナと炎症性腸疾患のその後~
今回は肝臓に関してのお話をしたいと思います。
実は我々消化器内科は肝臓・胆嚢・膵臓も拝見します。身体の臓器の中でも、結構広い範囲をカバーするんです。
そして私は、肝臓専門医という資格を所持しています。この資格は他の消化器系の専門医資格と比べると比較的珍しい資格であり、少しレアな存在です。
外来で肝臓専門医をしていると、『肝臓=お酒』というイメージを持っている方も少なくありません。しかし、肝臓の仕事はお酒の解毒だけではないんです。
実は肝臓には山ほど仕事があります。
脂質代謝・タンパク質代謝・解毒機能・貯蔵機能・消化機能補助・免疫サポート・内分泌機能と、なんともマルチタスク!
そして、基本不満を言いません。我慢強いです。 健診や人間ドックで肝臓の数値異常を指摘された患者さんも、外来にいらっしゃる際は『なにも症状ないのに』と仰る方が少なくありません。 マルチタスクをこなし、不満を言わない。人間だったらとても優秀ですね、スーパースターです。私も肝臓のような人間になりたいものです。
しかし逆に言えば、このような人が限界を迎えるときは唐突で、かつ取り返しが効きません。
あの人が居なくなって現場はてんやわんや。あぁ、あのスーパースターがいてくれたら、と思うも時すでに遅し。本当に大切な存在は失ってはじめて気づくのです。私も肝臓のような人間になりたいものです(2回目)。
さて、私は決して陳腐なセリフを並べるためにブログを記載しているわけではありません。
私が申し上げたいのは、肝臓に関して不安がある場合は是非しっかり調べましょうという事です。健診で【肝機能障害】で引っかかった方、
『大丈夫でしょ、症状ないし放っておこう』
『3年前に一回調べたけど体質って言われたから今回もきっとそうだろう』
『家族に肝臓悪い人いないし大丈夫だろう』
『お酒飲まないし肝臓は平気平気』
ドキッとした方、いらっしゃいませんか?
そんなことを思って、後回しにしているとスーパースターも蝕まれていきます。
肝臓は我慢強いだけで無敵ではないのです。
ダメージは着実に蓄積されていきます。
あらゆる肝臓の病気が行き着く先は【肝硬変】です。
こうなると無症状では居られません。
スーパースターもいじけてます。
易疲労感・黄疸・腹部膨満・浮腫・食欲低下・体重減少・出血傾向・かゆみ・脳症。生活が制限されることも少なくありません。
そしてさらに、【慢性的な肝障害】や【肝硬変】の状態は【肝細胞癌】のリスクを上げます。
この【肝細胞癌】も初期では無症状です。
さて、散々みなさんを脅してきましたが、じゃあどうするの?って話ですよね。
中国春秋時代の名将である孫子は言いました。『彼を知り己を知れば、百戦危うからず』
そう、原因を知りましょう。
その肝機能障害が、お酒のせいなのか、B型肝炎やC型肝炎と言われるようなウィルス性肝炎なのか、脂肪肝なのか、特殊な肝炎なのか。
健診の結果だけではわからないのです。調べずに『体質』という言葉で片づけてしまうのはもったいないです。
【肝硬変】になる前に、【肝細胞癌】になる前に、原因を知り対策をしましょう。
医学は統計学に基づいており、対策をしても必ずいい結果が待っているとは限りません。
しかし、自分の肝臓を理解してあげることでよりよい肝臓ライフが待っていると私は信じています。
さて、思い立ったが吉日、そのまま当院の予約サイトへ→ 外来WEB予約はこちら