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~炎症性腸疾患と新型コロナ~

消化器病センター長 田中 龍


皆様こんにちは。
新宿つるかめクリニック消化器病センター長の田中龍と申します。

さて、前回は炎症性腸疾患について、さわりの部分を説明させていただきました。

前回のまとめ

  • ・炎症性腸疾患とは、潰瘍性大腸炎とクローン病の事である
  • ・原因は不明だが、腸管が慢性的に炎症を起こしている
  • ・血便が出たら要注意
  • ・早期診断早期治療が有効
  • ・気になったら受診して、内視鏡検査の相談をしましょう。

今回は、炎症性腸疾患の患者さんが実際にどんな生活を送っているのか、を説明しようと思っていたのですが予定変更です。

最近、実際に患者さんから質問を受けるこの項目についてお話させていただきます。
そう、にっくきアイツ、新型コロナです。
前回に比べ、少し専門性の高いお話になります。

~炎症性腸疾患(以下、IBD)と新型コロナ~

言うまでもなく、我々の状況は新型コロナの出現にて一変してしまいました。
人との接し方をはじめとして、基本的な生活は変わり、その状況は今後も続きそうです。

我々医療者も必死に対応をしているところであり、なんとか出口を模索している状況です。
本日は【2020年8月現時点での】IBDとコロナの関係について述べさせていただきます。

本日の話のポイントは

  • ・IBD患者は新型コロナに感染しやすいのか?
  • ・もし感染してしまった場合、重症化しやすいのか?
  • ・妊娠中のIBD患者さんと新型コロナの関係は?
  • ・もし感染してしまった場合、IBDの治療はどうするべきか?

今回の内容は最新の研究や論文をもとに記載をしております。
JAPAN IBD COVID-19 Taskforce(http://www.ibdjapan.org/task/index.html?=zmail)
場合によってはその内容は修正される可能性がありますが、現時点の情報として記載させていただきます。

IBD患者は新型コロナに感染しやすいのか?

今のところ、IBDの患者さんが、新型コロナに感染しやすいという統計は出ておりません。

ただし、高齢のIBD患者さんは入院率や死亡率が高くなるとされております。これは基礎疾患のない方でも一緒です。

また、治療法により多少の差異が認められております。
具体的には、全身投与ステロイド・腸管吸収性ステロイドなどで重症化しやすい傾向にあり、
免疫調整剤の併用のないTNF-α製剤(インフリキシマブ・アダリムマブ・ゴリムマブ等)やウステキヌマブではリスクが低い傾向にあります。

もし感染してしまった場合、重症化しやすいのか?

今のところ、IBDの患者さんが、重症化しやすいという統計は出ておりません。
CDとUCではUCのほうが重症化しやすいようです。

治療による差異はかかりやすさの時と同様で、ステロイド系では注意が必要。生物学的製剤の一部では低リスクの可能性があります。

妊娠中のIBD患者さんと新型コロナの関係は?

直接的な報告はありませんが、産後に重症化する可能性が健常人同様指摘されています。

もし感染してしまった場合、IBDの治療はどうするべきか?

基本的には感染症の治療を優先させます、そちらの治療に影響しそうな薬は減量したり休薬したりします。

ステロイド治療の場合::同容量で続けつつ、減量に関しては感染症治療に従う
ステロイド以外の免疫抑制薬(チオプリン製剤・JAK阻害剤等)::一時的に休薬
生物学的製剤:予定された投与日から7-14日延期
それ以外の治療薬(5-ASAなど):続行

という方法が現在有力です。

いずれにせよ、大事なことは原疾患(IBD)のコントロールを今まで通りしっかり行う、ということです。
ご自身の判断で治療を中断したり、薬を減量する事は絶対にやめてください。
原疾患(IBD)のコントロールが悪くなると、感染症にかかりやすいとされています。

今回のまとめ

  • ・IBD患者がコロナにかかりやすいという統計はない
  • ・IBD患者がコロナに罹患した場合重症化しやすいという統計はない
  • ・現疾患の治療が最も重要であり、主治医に相談せずに勝手に治療を止めたり、減薬してはいけない
  • ・感染した場合、治療薬の継続や休薬は主治医と感染症担当医と相談して行う

消化器病センターのページはこちらです。

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