~新型コロナと炎症性腸疾患のその後~

皆様こんにちは。

新宿つるかめクリニック消化器病センター長の田中龍と申します。

 

約1年ぶりのブログとなります。

ピロリ菌やウィルス性肝炎についても記載していきたいと思いつつ、まだまだ我々の生活を制限するコロナウィルスと私の専門である炎症性腸疾患(IBD)の関係についてお話していきます。

以前のブログもご参考ください。

~炎症性腸疾患とは~
~炎症性腸疾患と新型コロナ~
~炎症性腸疾患の人の生活~

変異ウィルスや副反応などの問題はありますが、医学的にはワクチンを接種することに越したことはありません。

 

今回は、1年前にお話しした新型コロナウィルスとIBDのその後の関係について、1年半の中でわかってきたことをお話ししていきます。

 

 

 

新型コロナにおける基礎疾患とは

新型コロナ感染には、ワクチン優先接種のための基礎疾患の定義があります。

新型コロナ死亡者の9割近くにこの基礎疾患があるという統計もあります。

【厚生労働省】のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/content/000756902.pdf)から抜粋します

  1. 1.慢性の呼吸器の病気
  2. 2.慢性の心臓病(高血圧を含む。)
  3. 3.慢性の腎臓病
  4. 4.慢性の肝臓病(肝硬変等。脂肪肝や慢性肝炎を除く)
  5. 5.インスリンや飲み薬で治療中の糖尿病又は他の病気を併発している糖尿病
  6. 6.血液の病気(鉄欠乏性貧血を除く。)
  7. 7.免疫の機能が低下する病気(治療中の悪性腫瘍を含む。)
  8. 8.ステロイドなど、免疫の機能を低下させる治療を受けている
  9. 9.免疫の異常に伴う神経疾患や神経筋疾患

10.神経疾患や神経筋疾患が原因で身体の機能が衰えた状態(呼吸障害等)

11.染色体異常

12.重症心身障害(重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態)

13.睡眠時無呼吸症候群

14.重い精神疾患

15.BMI 30以上を満たす肥満の方

IBD自体はこの中には入っておりませんが人によっては、『8. ステロイドなど、免疫の機能を低下させる治療を受けている』に該当する可能性があります。IBDははっきりとした原因はわかっていませんが、免疫の暴走が関与していることはわかっております。そのため、IBDの治療薬は基本薬となる5-ASA製剤を除き、免疫調整剤(AZA・6-MP)、生物学的製剤(IFX・ADA・GLM・UST)、ステロイドなど免疫の機能を低下させる治療が多いです。

 

上記の15の病態は、理論上『コロナの感染リスク・重症化リスクが高い』ということになります。だからこその『基礎疾患扱い』であり、『ワクチン優先接種』なのです。

 

 

日本炎症性腸疾患学会の報告

1年以上前から【日本炎症性腸疾患学会】により統計がとられています。

JAPAN IBD COVID-19 Taskforce(http://jsibd.jp/office.html#t23)

細かいデータは割愛しますが、IBDの患者さんが新型コロナに感染しやすい、重症化しやすいという統計は出ておりません。

ただし、高齢のIBD患者さんは入院率や死亡率が高くなるとされております。これは基礎疾患のない方でも一緒です。

また、治療法により多少の差異が認められております。

具体的には、感染リスク/重症化リスク共に全身投与ステロイドでは高リスクとなり、腸管吸収性ステロイドや免疫調整剤は中リスク、

免疫調整剤の併用のないTNF-α製剤(インフリキシマブ・アダリムマブ・ゴリムマブ等)やウステキヌマブでは低リスクの傾向にあります。

 

 

結局どういうこと?

【厚生労働省】の基礎疾患の定義と【日本炎症性腸疾患学会】の統計発表。

これらは一見矛盾しているようにも見えますが、ことIBD領域においてはより詳細に分析しているのは後者の学会の方でしょう。

つまり、広義の免疫抑制剤としてはやはりコロナの感染リスク/重症化リスクが高い。しかしながら薬剤ごとに見ていけば、全身投与ステロイド・腸管吸収性ステロイド・免疫調整剤で気を付ける必要があるものの、生物学的製剤ではそこまでリスクは高くない。

という事でしょう。

当然、広義の免疫抑制剤を使用していなければ健常人とリスクは変わりません。

 

つまり、どのような治療をしているか、が重要なことなのです。

治療薬剤ごとに細かく基礎疾患の定義をするわけにもいかず、厚生労働省は『免疫の機能を低下させる治療』としているのでしょう。

 

 

生物学的製剤(BIO製剤)の位置づけ

今まで強烈に免疫を抑えると考えられてきた生物学的製剤(BIO製剤)ですが、【日本炎症性腸疾患学会】の統計を見る限りは実臨床上の易感染性(感染しやすさ)はそこまで高くないのではないか、というのが私の正直な印象です。

対象がウィルスなのか細菌なのか真菌なのか、また個人のそもそもの免疫力の問題などありますので、全ての症例に共通して言えることではありません。しかしながら、実臨床として思ったほどの(統計で差異が出るほどの)悪影響を与えないというのはプラスの情報と考えられます。

もちろん安易なBIO製剤導入には私は反対です。BIO製剤には中止基準がなく薬剤特性上、注射剤となります。つまり、一度導入をしたら基本的には辞め時は無く、特別の事由が無い限り続ける治療になります。

 

しかしながら、急性期に何度も繰り返しステロイドを使用するよりは、コントロールの面からも、易感染性の面からも生物学的製剤を導入したほうが良いケースはありそうです。

 

 

 

次回は 早瀬行治 先生にお願いします。

タイトルは"OKサークル"です。

消化器病センターのページはこちらです。

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