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アルツハイマー病の新薬について

新宿つるかめクリニック 川上明夫

はじめに

認知症患者は日本国内で約600万人に上り、そのうち6割以上がアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)といわれています。脳神経細胞の外にアミロイドβ(ベータ)というタンパク質がたまって老人斑(アミロイド斑)というシミのようなものができるのがアルツハイマー病の始まりです。それによって今度は脳神経細胞の中にタウという別のタンパク質がたまって溶けにくい線維の固まりが出来て(神経原線維変化)、その結果、脳神経細胞が死んでアルツハイマー病を発症すると考えられています。アミロイドβは固まりやすいタンパク質で、どんな人にも生まれた時から作られています。若いうちは脳内で分解されて除去されますが、年を取るとうまく壊せなくなり、アミロイドβがたまりだすと脳神経細胞に対する毒性が出てきます。アルツハイマー病の患者さんでは発症の20-30年くらい前からたまり始めていると言われます。

前回、アルツハイマー病の新薬アデュカヌマブがアメリカで発売されたことを書きました。ドネペジル(アリセプト®)などこれまでの薬は、認知症で脳神経細胞が抜け落ちた後になって足りなくなっている物質を補い、症状を一時的に改善するものでした。このアデュカヌマブはアルツハイマー病の発症の原因に踏み込んで治療する世界初の薬でした。アデュカヌマブはたまったアミロイドβの除去を促進する薬です。ただ日本の製薬企業エーザイと共同でアデュカヌマブを開発した米製薬企業バイオジェンは今年1月、アデュカヌマブの販売を終了すると発表しました。高額な上に公的保険の適用が制限され、普及しなかったためです。日本でも「有効性を明確に判断できない」として承認が見送られました。ただこれでアルツハイマー病に対する新薬の開発がストップしたわけではありませんでした。

アルツハイマー病の新薬について

レカネマブ(製剤名レケンビ®)

エーザイとバイオジェンは、新たにレカネマブ(製剤名レケンビ®)を開発し、2023年12月に発売しました。レカネマブは主に可溶性アミロイドβ凝集体(プロトフィブリル)に選択的に結合することにより、アミロイドβを減少させると考えられています。レカネマブの安全性と有効性は、臨床試験で得られた、1,795人分のデータに基づいています。その試験で、18ヶ月間にわたるレカネマブの投与により、プラセボ(偽薬;レカネマブの投与なし)と比べて、脳の中に溜まっていたアミロイドβが顕著に減少し、さらに記憶、見当識、判断力と問題解決能力、社会活動能力などの全般臨床症状の悪化が27%抑制されました。これは、症状の進行をおよそ7.5カ月遅らせる効果に相当します。また自立して生活する能力についても、プラセボと比べて37%の臨床的有効性が認められました。また、衣服の着脱や食事、地域活動への参加など、自立して生活する能力についても、プラセボと比べて37%の臨床的有効性が認められました。

ドナネマブ(製剤名ケサンラ®)

さらにちょうどこのブログを書いていた今年11月に新規アルツハイマー病治療薬ドナネマブ(製剤名ケサンラ®)が米製薬企業イーライリリーより発売されました。ドナネマブもアミロイドβをターゲットとした治療薬です。レカネマブとの違いは、レカネマブが主にアミロイドβが凝集する過程のプロトフィブリルに作用するのに対して、ドナネマブは主にアミロイドβが凝集したアミロイド斑に作用し、アミロイド班を除去することです。ドナネマブの安全性と有効性は、臨床試験で得られた、1,736人分のデータに基づいています。その試験では、18ヶ月間にわたるドナネマブの投与により、認知機能や日常生活能力の低下が抑制されるかを評価しました。その結果、ドナネマブの投与により、プラセボ(偽薬;ドナネマブの投与なし)に比べて、脳のアミロイドβは平均で84%減少し、さらに日常生活機能や認知機能を含む全般臨床症状の悪化は22%~29%の遅延効果が認められました。またこの臨床試験で早期にドナネマブを投与することで、認知機能の低下をより効果的に抑制できるのかどうかについても調べられました。先述のように、アルツハイマー病は、アミロイドβに加えて、脳内にタウというタンパク質が蓄積することで、病気が進行していくと考えられています。そこで被験者を、タウの蓄積量が少ない(病気が進んでいない)グループと、タウの蓄積量が多い(病気が進んでいる)グループに分けて、ドナネマブの投与による認知機能や日常生活機能への効果を調べました。その結果、タウの蓄積量が少ないグループでは、臨床症状の悪化を35~36%抑えられる可能性が示されました。これらは、症状の進行をおよそ7.5カ月遅らせる効果に相当します。早期にドナネマブを使用するほど、効果が出やすいことを示唆しています。

アルツハイマー病の新薬について

どんな患者さんが新薬による治療を受けられるの?

ではどんなアルツハイマー病の患者さんでもこれらの新薬による治療が受けられるのでしょうか?残念ながら適応症は限られており、レカネマブやドナネマブも「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)及び軽度の認知症の進行抑制」となっています。また投与対象となるかは、投与を行う医療機関において臨床認知症尺度による検査やMMSE(神経心理検査)のほか、アミロイドPET検査または脳脊髄液検査等で判断します。またMRI検査を受けられることが要件となっています。従って検査の結果によっては、希望しても治療対象とならない場合があります。また治療を受けられる医療機関は専門医の有無や検査設備の有無などである程度限られています。詳しくは東京のとうきょう認知症ナビをご参照下さい。気になる治療費用ですが、 レカネマブの医療費年間費用が約298万円、ドナネマブが約308万円と相当な高額になります(体重が50キロの人の場合。体重によって投与量が変わるため、費用は変わります)。自己負担額はその1割~3割負担となります。ただレカネマブもドナネマブも高額療養費制度が適用されるため実際の患者の負担額は月数万円程度に抑えられる見込みです。投与期間は、レカネマブは2週に1回の投与で18ヶ月間となります。2024年度中には累計投与患者数として7000人が見込まれています。ドナネマブは4週間に1回の投与であることと、原則18ヶ月投与が必要ですが、治療効果が良ければ12か月投与で早めに終了できる点がレカネマブとの違いです。

まとめ

最近のアルツハイマー病の新薬について簡単にまとめました。レカネマブとドナネマブの臨床試験では、認知機能や自立して生活を送る能力の低下を30%程遅らせる効果(症状の進行をおよそ7.5カ月遅らせる効果)が認められました。これは従来の治療薬と比較し、画期的な効果ですが、一方で劇的に症状を改善するとはいえませんし、これらの治療で認知機能の低下は止めることは出来ません。アルツハイマー病は、脳にアミロイドβが溜まってから、20-30年後に発症すると考えられており、この長い潜伏期間の間にアミロイドβが脳内で炎症を起こして、脳に修復不可能な病変を引き起こしてしまうからです。またこれらの新薬は中等度以上に進行したアルツハイマー病患者さんには使えません。したがって、いかに早期にアルツハイマー病と診断して、レカネマブやドナネマブを開始できるかが重要だと考えられます。将来的にはアルツハイマー病の「治療」は、「予防」へと動き始める可能性があります。現在、認知機能の低下を完全にとめる、さらには回復を促すことを可能にする治療薬を開発すべく日夜研究が続けられています。

当クリニックではもの忘れ外来を開設しております。早期の認知症を診断するのは簡単ではありませんが、ちょっとした初期症状(自発性の低下、意欲の減退、易怒性など)から診断に至ることもあります。気軽にご相談下さい。上記の新薬の治療が受けられる大学病院や総合病院とも連携しご紹介することも可能です。

アルツハイマー病の新薬について

参考資料:

アルツハイマー型認知症の新しい薬ができました(とうきょう認知症ナビ)
健康長寿ラボ(国立長寿医療研究センター)

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