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怖い!大動脈解離(だいどうみゃくかいり)についてのQ&A

 『大動脈解離』という病気を聞いたことがあるでしょうか。昨年も芸能人の方がこの病に倒れたニュースがありました。その方は、急死に一生を得ましたが、もし発症した場合、約20%は病院に搬送する前に死亡するというデータもあります。解離する部位やタイプによっても予後は異なりますが、たいへん恐ろしい病気です。

Q『大動脈解離』とはどのような病気ですか。

A 大動脈は、心臓の左心室(血液を全身に送り出す部屋)からつながっている血管で、身体のほぼ中心~後側を胸~腹部まで走っています。直径は2~3㎝程度で人の身体の中で最も太い血管です。また、その壁は3層になっており、血液に触れる部分から内膜、中膜、外膜と呼びます。厚さは2~3㎜ほどです。

 『解離』はこの内膜がなんらかの原因で傷つくことによって血液が膜の間に流れ込んでいき、内膜と外膜との隙間に血液が溜まる状態をいいます。大動脈の膜が“裂ける”という表現がイメージしやすいかもしれません。もし、外膜まで破れてしまったら『大動脈破裂』で即死ということもありますが、外膜は比較的に丈夫にできているので、そこで大出血はくいとめられています。しかし、これを治療しなければ、流れる血液の圧に押され解離が広がり、結局“破裂”ということにもなります。また、大動脈は各臓器に栄養を行きわたらせるために血管が分岐しているので、状態が進むとさまざまな臓器に血液がいきわたらなくなり“虚血症状”を引き起こします。『解離』が心臓に近く、心臓の出口にある弁(大動脈弁)に達すると弁が壊れてしまい“大動脈弁閉鎖不全”となり、心臓にも大きな負担がかかることになります。大動脈解離を発症して治療をしなければ70~80%の人が2週間以内に死亡するというデータがあります。

Q『大動脈解離』とはどのような病気ですか。

Q どんな症状がありますか。

A 大ていは症状があります。解離が起きると突然の激痛があります。その多くは胸痛ですが、解離が広がると痛みが腹部や背部、脚などに移動することがあります。また、腕や脚の脈が弱く感じられたり、右腕と左腕の脈の強さや暖かさが違ったりすることもあります。 まれに、激痛ではない場合に、たまたま撮った胸のレントゲン写真で『大動脈拡張』を指摘され解離が発見されることもあります。精密検査ではCTスキャンを行うと解離の正確な部位や大きさなどを判断することができます。

Q どのような治療法がありますか。

A 手術になる場合と薬物で血圧を下げ保存的に診ていく場合があります。どちらの選択になるかは、解離の部位や程度によります。どちらにしても素早く診断、治療を行うことが大切です。

 手術では、『解離』した部分を人工血管に置き換える“人工血管置換術”が一般的です。大動脈は、身体の本幹とも言えますので、簡単に悪いところを全部取り替えてしまえばいいというものではありません。身体へ大きな負担がかかりますので、手術の適応範囲は慎重に決めます。


 開胸(腹)手術の他に、最近ではカテーテルを大動脈に通し、血管の中から血管の壁を補強するようなステントグラフトという治療法もあります。胸や腹部を開けるより身体への負担は少ない方法ではありますが、こちらも解離の状況によって適応するかどうかが決まってきます。


 手術やカテーテルでの治療をした、しないにかかわらず、血圧のコントロールは厳重管理が必要です。血圧が高ければそれだけ大動脈に負担がかかり、状態を悪化させてしまうからです。また、動脈硬化は血管の劣化ですので、進行しないよう血圧と並行して血糖値や脂質系のコントロールも重要です。『大動脈解離』の急性期を乗り越えた人の中でも3分の1程度は、後々手術をしています。治療は継続していくことが重要です。

Q 予防するにはどうすれば良いですか

A 『大動脈解離』は、一度起きてしまうと一生フォローが必要な病気です。いつまた解離が起きるかという心配も出てきます。そうならないように、とにかく予防が重要です。一番の予防は、大動脈がいつまでも若々しく弾力があること、逆に言うと動脈硬化が大敵ということになります。

自分の動脈硬化の度合いを知りたい場合のスクリーニング検査は、

・脈波伝播速度検査(PWV)
・足関節上腕血圧比検査(ABI)
・頸動脈超音波検査
などのようなものがあります。

動脈硬化が進行しないようにするには、

1.血圧のコントロール

2.脂質のコントロール
3.糖尿病予防
4.適度な運動
5.禁煙
の五本柱が大切です。

 発症してから後悔しないよう、直近の健康診断のデータに異常がなくても、五本柱を意識して日常生活を送ることが大切です。


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