会社や健康保険組合の健康診断には、多くの場合、一定以上の年齢になると「胃の検査」が含まれています。その際に、「胃カメラ検査」と「バリウム検査」の選択制を採っているところがほとんどです。
では「胃カメラ検査」と「バリウム検査」、どちらを選べばよいのでしょうか。
話は少し変わりますが、健康診断ではなく「急な胃痛」で医療機関に行った場合はどうでしょうか。【新宿海上ビル診療所】には胃カメラもバリウム検査の機材もありますが、ほぼ100%、「胃カメラ検査」を実施します。なぜなら、「胃カメラ検査」の方が検査の精度が遥かに高いからです。
「バリウム検査」は、空腹状態でバリウム(白い液体)を飲み、食道~胃を流れるさまを外側からレントゲン撮影します。液体の流れがスムーズでない場所や、ポリープや腫瘍が疑われる凹凸がないか把握するのが目的です。近年よく耳にする「スキルス性胃がん」の発見については、胃カメラ検査よりも有効な場合があります。
しかし、初期の胃がんにはバリウム検査で凹凸があらわれないものもあり、「異常なし」と診断されてしまう可能性があります。一方で先天的に胃に変形があり、実際には異常がないのに毎年のように「○○疑い」という診断をされてしまう方もいます。また、レントゲンを使用するので被ばくのリスクがあり、検査後に下剤を飲んでバリウムを体外へ出すのも一苦労です。
そしてバリウム検査はあくまで「スクリーニング」(ふるいわけ)が主目的の検査であり、「確定診断」ができる検査ではありません。バリウムで異常が見られた場合は、結局精密検査として胃カメラ検査を受けなければなりません。「二度手間」のリスクがある検査ということになります。
「胃カメラ検査」はバリウム検査と異なり、胃の中を直接目視する検査です。カラーで胃の中をみるため状態が一目瞭然で、凹凸のあらわれない粘膜の荒れなども発見しやすくなります。早期胃がんの発見に関しては、バリウム検査とは到底比較になりません。レントゲンも使用しないので被ばくの心配もありません。しかし、粘膜の下で進行する「スキルス性胃がん」の発見はやや苦手としています。
また、腫瘍や潰瘍が疑われる組織がみられた場合は、その場で組織を採取して精密検査を行うことができます。悪性の細胞ではないか、胃炎・胃潰瘍・胃がんの原因となるピロリ菌に感染していないかの検査が可能です。これもバリウム検査にはない大きなメリットです。
特に2013年から、「胃カメラ検査で慢性胃炎と診断され、ピロリ菌に感染している方」は保険適用でピロリ菌の除菌治療が受けられるようになりました。これで日本人の胃がん発生数が大きく減少するのではないかと期待されています。
結論としては、健康診断でも精度が高く、被ばくの心配のない胃カメラ検査を選ぶのがお勧めということになります。よほど大きな異常がない限り、バリウム検査のような再検査の必要もありません。
しかし胃カメラ検査には、「苦しい」「怖い」というイメージがどうしてもつきまとっています。しかしこの唯一といっていいデメリットについても、様々な工夫で軽減が図られています。
まず、カメラそのものが技術の革新により年々細くなっています。現在の主流は直径5~8ミリくらい、100円ボールペンくらいの細さです。以前は10ミリ以上のものが当たり前だったので、かなりの改善です。
さらに近年では、「鎮静剤・安定剤」を使用する医療機関が増えています。これは検査前にぼうっとする薬剤の点滴を行い、苦痛を軽減するというものです。点滴の効きには個人差があるので、医師が様子をみながら薬の量を調整します。以前は喉のシロップ麻酔だけで検査を行っていたので大きな改善です。
【新宿海上ビル診療所】でも鎮静剤・安定剤を使用しており、事前に受診者の方に「眠るくらい」「少しぼうっとするくらい」といったご希望を伺ってから検査を実施しています。もちろん、「慣れているので薬は無しで大丈夫」という方には点滴は行いません。
日本では、2015年に13万人以上の方が新たに胃がんと診断されると予測されています。しかし早期の段階で発見できれば、充分に完治が見込める病気です。「胃カメラ検査を怖がり、進行してから見つかる」という事態だけは避けなければいけません。
年々細くなるカメラ、鎮静剤・安定剤の使用といった工夫が重ねられているので、以前苦しい思いをした方・受けたことがない方もぜひ一度検査を受けましょう。
「新宿つるかめクリニック」は、健康診断、外来診療の両方の機能を持っています。
健康診断は、住民健診・企業健診から人間ドック、各種がん検診まで、様々なメニューに対応可能です。外来診療は、各種専門医を幅広く取り揃えています。
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