消化器内科 伊勢円佳
こんにちは。消化器内科医師の伊勢と申します。今日は、胃カメラ・大腸カメラについて患者さんからよく頂く質問をQ&A形式でご紹介いたします。
内視鏡検査の目的はいろいろありますが、健康な方への検査では「がん」の発見と予防が最も大きな目的です。胃や大腸のがんは、かなり進行するまで症状が出ず、症状が出てからの検査では手遅れになることがあります。また、がんを早期発見できれば、手術で胃や大腸を切り取らなくても、内視鏡手術でがんを根治することができます。
さらに、胃癌のほとんどは「ピロリ菌」というばい菌が胃に感染して起こることが分かっています。ピロリ菌に感染している場合は、早期に発見して除菌治療をすることが胃癌の予防になります。ピロリ菌に感染しているかどうかのチェックは胃カメラでないとできません。大腸でも、大腸癌の「もと」となる大腸ポリープを、小さなうちに発見して切除することが大腸癌の予防に効果的です。胃や大腸のがんの早期発見と予防のため、症状がなくても定期的な内視鏡検査をお勧めします。
ピロリ菌はとても弱い菌ですので、大人になってから感染することはまずありません。免疫力の弱い子どもの頃に、井戸水やピロリに感染した大人の唾液を通じて胃に侵入し、感染すると言われています。一度感染してしまうと、自然にいなくなることはほぼなく、そのまま胃に住み着いて、胃の粘膜に「萎縮性胃炎」と呼ばれる変化を起こします。胃の粘膜がペラペラに薄くなってしまうイメージです。この胃炎になった部分から、胃癌が発生してくることが分かっています。また、胃炎の範囲は、長い期間ピロリの感染を放置するほど、胃の全体に広がってしまいます。従って、ピロリに感染している場合は一刻も早く除菌をすることが必要なわけです。このような理由から、社会に出て働く20代前半くらいの年齢で、まずは一度胃カメラを受けてみることをおすすめします。とくに、ご両親がピロリ菌に感染していたことが分かっている場合は、若いうちに胃カメラを受けましょう。
便潜血検査は、便の中に混じった血液の成分を調べる検査です。進行した大腸癌や、大きく育ったポリープからの出血を見つけるための検査です。たいへん有用な検査ですが、問題点もあります。まずは「出血していないポリープがあってもわからない」ということです。出血するほど大きく育ってしまったポリープは、内視鏡で切り取ることはできますが、術後の出血やポリープの取り残しといった不具合の起こるリスクが高くなります。ポリープは小さなうちに切除してしまった方が良いのです。さらに、「大腸の奥の方にできるがんでは陰性になってしまうことがある」という問題もあります。大腸癌は大腸の出口近くにできることが多いのですが、まれに大腸の奥の方にできることもあります。そのような大腸癌では、癌からの出血が便潜血として検出されづらく、見落とされてしまうことがあるのです。便潜血がずっと陰性だから安心とは残念ながら言えないのです。40歳くらいになったら、一度大腸カメラを受けてみることをお勧めいたします。
当院では、鎮静剤を使った「苦しくない」内視鏡検査を受けることができます。「胃カメラは前にやったけど辛くてもう2度と受けたくない」という方も、苦痛のない検査が可能ですので、いちど外来でご相談いただければ幸いです。
*胃カメラ・大腸カメラ、同時に実施できます。
*鎮静剤を使った「苦しくない」内視鏡検査を受けることができます。
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