脳神経外科 羽井佐 利彦
総合内科と脳神経外科を担当している羽井佐(はいさ)です。
「頭痛」についてです。頭痛情報はネットに溢れているので今さら…とも思いますが、このような場合には当クリニック脳神経外科・神経内科を受診して欲しい と私が思うような方々に向けたメッセージのつもりで書きます。
痛み止めの市販薬を頻繁にのんでいると効果が弱くなり、毎日のようにのむようになる、あるいは毎日のんでもあまり効かなくなる といったことがあります。薬剤使用過多による頭痛 medication overdose headache (MOH)/薬物乱用頭痛 と呼ばれている頭痛の一種です。この場合違うタイプの薬を処方し、いわゆる鎮痛薬を減らす/止めるよう努めることになります。
片頭痛発作に効く良い薬がありますし、予防薬(頻度を減らす、程度を軽くする)もあります。前者はトリプタン系の薬(イミグラン®、ゾーミッグ®、マクサルト®、レルパックス®、アマージ®)、最近発売されたジタン系の薬(レイボー®)などになります。後者にはカルシウム拮抗剤、βブロッカー、抗てんかん系の薬、抗CGRP受容体モノクローナル抗体薬(エムガルティ®、アイモビーグ®、アジョビ®)などがあります。「(片)頭痛がなくなって人生が変わった」という患者さんもいました。
頚椎疾患が潜んでいることもありますので、状態により頚椎の検査を受けた方がいいかもしれません。マッサージ、筋トレやストレッチが大切ですが、肩こり頭痛・首こり頭痛に処方する薬もあります。
当クリニックでは漢方薬(呉茱萸湯、釣藤散、五苓散、葛根湯、苓桂朮甘湯、桂枝人参湯など)を処方することもあります。
脳腫瘍や副鼻腔炎などが見つかることもあります。頭部CTや脳MRI検査を一回は受けた方がいいでしょう。以前「二日酔いが数日続くようになった」ということがキッカケで脳腫瘍が見つかった人もいました。頭痛で副鼻腔炎が見つかり耳鼻咽喉科で手術を受けたら頭痛が消えたという患者さんもいました。
脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血が疑われます。命に関わりますので、明日とか仕事が終わったら などと思わず、直ちに緊急で医療機関を受診してください。典型的なクモ膜下出血の場合は、激しい頭痛で倒れこんでしまったり意識がボーっとしてしまったりするため、たいてい救急車で病院搬送されますが。
椎骨動脈解離(血管が裂ける疾患)の可能性があり、命に関わりますので緊急で医療機関を受診してください。本来なら最初に挙げるべきは、命に関わる⑥と⑦かもしれません。急に振り向いたりして首をひねった時に血管が裂けることもありますので、首回し体操や首へのカイロプラクティックは、私は勧めません。ゴルフの際も要注意です。
帯状疱疹の初期かもしれませんし、いわゆる後頭神経痛かもしれません。帯状疱疹では早期診断と早期治療が大切ですので、早めに受診してください。
以上、つれづれに ではありませんが今までの経験を思い出しながら記しました。網羅的なものでも詳細なものでも決してありません。頭痛について詳しくお知りになりたい方には「頭痛大学」をお勧めします。私が東大病院脳神経外科で医員をしていたとき助教授だった間中先生が始めたホームページです。
最後に、頭痛が日本の脳神経外科医の守備範囲内にある疾患であることを強調しておきたいです。日本脳神経外科学会第82回総会(2023年10月25日~27日)でも「脳神経外科医と頭痛~脳神経外科医が頭痛患者さんを診る際に~」というセッションがあります。
(2023年10月20日 記)