循環器内科 寺島 正浩
2019年に発表されたイギリスのUKバイオバンクの50万人(40-69歳)のデータでは、何らかの不整脈が2.35%に認められたとされています。頻度は年齢とともに増加し、心房細動が最も多い不整脈であったと報告されています(Khurshid S, Circ Arrhythm Electrophysiol. 2018;11(7):e006273.)。不整脈はやはり頻度の多い異常になります。 不整脈の検査で必ず実施する必要性があるのが、24時間ホルター心電図検査と心エコー検査です。ホルター心電図検査は、24時間携帯用心電図を身体に直接付けて、普段どおりの 生活の中で約10万回の心電図を記録します。心エコー検査は、身体に全く害のない超音波で、心臓の動きや大きさを検査します。
この論文は、デンマークのコペンハーゲン在住の678人(男性55歳以上、女性60歳以上)の健常人に
Holter検査(24時間心電図検査)を行ったものです。上室性期外収縮の頻発は99人(15%)に認められました。上室性期外収縮が頻発する群(1時間に30回以上もしくは20連発以上)では、頻発を認めない群と比較して、7年間の観察期間中に全死亡および脳卒中のリスクが60%増加し、さらに同群では脳梗塞になりやすい心房細動の発生が2.7倍多かったと報告されています。この結果から、上室性期外収縮であっても、頻発する場合には特に注意が必要であることがわかります。そのためにも、ホルター心電図検査は重要です。
心室期外収縮では、ホルター心電図以外に特に心臓そのものの異常を検査することが重要です 。図は、2019年に発表されたイタリアのミラノ大学での研究です。左側上下段(ABの画像は心 エコー画像で正常所見です。しかし、造影心臓MRI画像(C-Fでは、矢印部分の心臓の筋肉の外側よりが白く光っており、心筋線維化 (心臓の筋肉の傷)を示し、古い心筋炎(心臓の筋肉の炎症)の傷跡の所見です。このように、心臓MRIでは、心エコーでは検出できない心筋内部の状態までも評価することが可能です。
この研究では、このように心エコー検査で正常であった(器質的心疾患の合併を認めない)、946 名の心室性期外収縮のある患者さんを後ろ向きに解析しました。その結果、心臓MRI検査で全体の約26%にあたる241名に器質的心疾患(心筋症など)の合併を認めました。心室期外収縮の頻度によっては、心エコーのみならず心臓MRIによる心筋の評価が重要であることを示しています。
大きく分けて、薬物治療と侵襲的治療法(カテーテル治療や外科的治療)があります。薬物治療は不整脈のタイプにより、心臓の中の電気回路を整える薬や脈を遅くする薬を使用し ます。 侵襲的治療では、最近では外科的治療よりもカテーテル治療が行われることが多くなっています。太腿の付け根よりカテーテルという細い管を血管に挿入し、心臓まで進めて、心臓の中の電気回路を焼き切ったり凍らせたりします。治療時間は不整脈の種類によりますが、平均2-4時間程度で、局所麻酔で行われ、痛みを感じることは殆どありません。
最近では、事前に撮影した3D画像を用いて、カテーテルの心臓内での位置を確認しながら治療を行う「カテーテル ナビゲーションシステム」が使用されることが多くなっています。いわゆる、自動車の「カーナビ」のシステムと似ています。
(日本心臓財団Heart Newsより)
様々な心臓への負担が不整脈の引き金になることが知られています。高血圧過労や精神的ストレス、睡眠不足(睡眠時無呼吸症候群などを含む)などは代表的です。他には、食べ過ぎ、飲み過ぎ、喫煙、これら関係する危険因子に適切な治療や対処法を行うことで、不整脈が予防できることが知られています。
コロナ禍でこれまでとは異なる生活スタイルに変化した人も多いと思います。不整脈は生活スタイルの変化やストレスと密接に関連すると考えられています。異常を感じられれば、一度循環器内科を受診されることをお勧めします。
次回のブログは循環器内科 門前幸志郎先生です。
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