〜コロナ禍で外食について考える+おまけ〜

川上 明夫

 

 

感染者が日々ましていく中、外食の機会が少なくなり皆さん食習慣が変化したのではないでしょうか?

 

 

海外の論文から

ちょうど一年前に海外で興味深い糖尿病の論文が発表されました。代謝は朝に食事を摂り、寝るための時間である夜は絶食するよう体内時計によって最適化されているという仮定の元に、糖質を沢山含む朝食の後に中程度の昼食と少量の夕食を摂取する1日3食法の有効性を検証したものです。

 

研究に参加したのはインスリン治療中の2型糖尿病患者で、一日3食群と、比較対象として一日6食群(1日3食+低血糖予防に3回の間食)の2群にわけ12週間の追跡調査をしました。一日3食群は、パン、フルーツ、デザートなどから成る約700kcalの多めの朝食、600kcalの中程度の昼食、そしてデザート、フルーツを含まないなど糖質を抑えた200kcalの少量の夕食を摂取しました。一日6食群は、1日の間でカロリー摂取が比較的均一となるよう、朝食、昼食、夕食に加えて150kcalの3回の軽食を摂取しました。2つの食事法で栄養素の配分と総カロリー量は同じでした。その結果一日3食群で有意な体重減少(平均5.4kg)を認めたのに対し一日6食群では0.3kgのわずかな増加がみられました。また一日3食群のHbA1値は1.2%低下したのに対し(このHbA1cの低下度は薬1剤分に匹敵します)、一日6食群の低下は有意ではありませんでした。要は1日の早い時間に糖質を多く含むカロリーを摂取したら、少量を小分けに摂取した場合より体重が減少し血糖コントロールも改善したということです。また元々糖尿病患者では体内時計や代謝の遺伝子の発現に異常が出やすいのですがこの1日3食法により改善が認められました。

これまでも糖尿病の患者さんが朝食をしっかり摂るようにし、夕方の糖質摂取は減らすことで糖尿病や肥満が改善することを我々臨床医はよく経験してきました。この研究はそのやり方を更に押し進めて医学的に検証したものです。

 

 

外食と肥満・糖尿病

ここで初めて外食の話になりますが、夜外食すると疲労や空腹やアルコールの影響も手伝ってどうしても糖質やカロリー摂取が多めになります。また帰宅、就寝も遅くなりがちでこのあと家に帰って寝るだけならカロリー過多、高血糖になってしまうわけです。特に朝食をスキップする人の場合、糖質を多く含むカロリーの摂取が1日の遅い時間に集中し、糖質摂取と消費のアンバランスが更に顕著です。上記の1日3食法と真逆です。こういったライフスタイルは長年にわたって身についたものであることが多く、特に通勤、残業、シフト勤務など仕事がからんでくるとなかなか修正困難です(でした)。

 

 

コロナ禍による食習慣の変化

そんな中での今年のコロナ禍です。コロナ禍は多くの人々のライフスタイルを否応なく変えてしまいました。食習慣も例外ではありません。その中で2つ重要な変化を挙げれば、前回触れたように多くの患者さんにおいて夜の外食が減りました。一方で今まで朝食をスキップしていたのが、在宅勤務やフレックスによって朝食を摂る(摂れる)ようになったという患者さんが増えました。この2つの変化は糖質を多く含むカロリーの摂取が1日の遅い時間から前倒しになるきっかけになるかもしれません。

 

まとめ

糖尿病や肥満症の患者さんは糖質摂取を一日の早い時間に前倒しするだけで体重や血糖値が改善する可能性があります。そのためには朝食をしっかり摂り夜は外食を控えましょう。これは必ずしも簡単ではありませんがこの機に食習慣を見直してみましょう。

 

おまけ

楽譜画像

最後に私の好きな音楽について一言。ソラブジ(Kaikhosru Shapurji Sorabji, 1892 - 1988)というイギリスの作曲家で、私見では20世紀に最大のピアノ音楽の作曲家です。彼が最も得意とする分野は厳密な対位法に基づいた数十回に及ぶ変奏をもつフーガやパッサカリアで演奏に超絶技法が要求されます。図はピアノソナタ第5番(ピアノソロなのに何気に7段のスコアです)。


Opus Clavicembalisticum, KSS 50: IX. Interludium Alterum - Passacaglia
一方でファンタジー過剰なロマン派音楽の極北と言うべき曲も書いています。
Sequentia cyclica, super dies iræ, KSS 71: X. Il tutto in una sonorità piena, dolce, morbida,...
彼の曲はいずれもあきれるほど長いので(上記の曲は全部聴くとそれぞれ4時間と9時間かかります)冬の夜に聴くにはぴったりです。

私のブログは今回でひとまず終了です。日に日に寒さが増しておりますが、皆様にはくれぐれもご自愛いただき、良い新年をお迎えになれますようお祈り申し上げます。

次回のブログは呼吸器内科 小川ゆかり先生です。

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