川上明夫
果物の美味しい季節になりました(まあ一年中そうですが…)。さて新型コロナの重症化リスクのひとつに糖尿病が挙げられています。糖尿病と新型コロナとの関係についてまとめてみました。
重症化の前にそもそも糖尿病があると新型コロナにかかりやすいでしょうか?中国のいくつかの報告では新型コロナ患者に占める糖尿病患者の割合は中国の全人口の糖尿病の有病率と同程度だったそうです。一方で欧米の報告は糖尿病が感染リスクを増大させる可能性を示唆しています。糖尿病の新型コロナ感染リスクへの影響は人種差があるかもしれません。今の所アジア人においてはという条件付きですが糖尿病それ自体では新型コロナの感染リスクには大きく影響することはなさそうです。
糖尿病患者さんが一番気になる情報だと思います。アメリカの報告では新型コロナ患者に占める糖尿病患者の割合は人工呼吸やECMOなどの重症群になるほど高くなっていました。イタリア、中国の報告でも同様の傾向が指摘されています。地域や人種によらず糖尿病は新型コロナの重症化リスクといえそうです。
では血糖コントロールの良し悪しで重症化リスクは変わるでしょうか?中国の報告では新型コロナにかかった糖尿病患者のうちコントロール不良群(平均HbA1c8.1%)の死亡率が11.1%に達したのに比べて、コントロール良好群(平均HbA1c7.3%)の死亡率は1.1%に止まり、非糖尿病患者(2.7%)とほぼ同等でした。これは血糖コントロール不良状態では重症化しやすい一方、良好な血糖コントロールにより重症化リスクを軽減できることを示唆しています。血糖コントロールが悪い方は血糖コントロールが新型コロナ対策と考えて改善に取り組むことが肝要です。
どのくらいまで血糖を下げれば良いかということについては決まった見解はまだありません。私はまず一般的な合併症予防のための目標といわれているHbA1c 7.0未満を目指そうとお伝えしています(患者さんの年齢や合併症によって多少変わります)。
糖尿病患者に特別な新型コロナ対策が必要ということはないようです。ただ外出自粛については、活動量を減少させこれまでの食習慣を変化させ体重増加や血糖コントロールの悪化につながるおそれがあるため、全体の活動量は落とさないよう心掛け食事の摂り方に十分に注意する必要があります。
・糖尿病があっても新型コロナにかかりやすいとはいえないようです。
・ただし新型コロナが重症化するリスクがあります。
・重症化しないために適切な血糖コントロールが重要です。
ということでこの時期、寝冷えと寒暖差と夜ふかしと運動不足と食べ過ぎに注意してお過ごし下さい。
1.糖尿病と新型コロナウイルス感染症に関する Q&A(日本糖尿病学会)
2.How COVID-19 Impacts People with Diabetes(米国糖尿病学会)