メディカルトピックス

脳腫瘍ってどんな病気?

朝起きたときに頭痛がする。我慢して起き上って活動し始めると、だんだん痛くなくなる。しかし、次第に頭痛の時間が長引くようになり、吐き気や嘔吐、視力の低下や視野の狭窄を伴うようになる―。

これが脳腫瘍の典型的な自覚症状です。任侠映画や時代劇で活躍している俳優の松方弘樹さんが脳腫瘍の一種である「脳リンパ腫(中枢神経系原発性悪性リンパ腫)」であることが明らかになりました。当初は頭痛を訴え、「風邪と思っていた」(所属事務所)とのことですが、「体全体がしびれる」「腕に力が入らない」などの症状が出て検査を受けた結果です。「患部は小さいが、厄介なところにある」ため、外科手術による摘出ではなく、抗がん剤による化学療法を受けているようです。

転移性と原発性、良性と悪性

脳腫瘍は頭蓋内に発生する腫瘍の総称で、脳そのもの(脳実質)、脳を覆う髄膜、脳から直接出ている脳神経、ホルモンなど内分泌機能の調整をしている脳下垂体に発生します。

脳以外の部位にできたがん細胞が血液によって運ばれて頭蓋内に転移する転移性脳腫瘍と、脳内の細胞そのものががん化する原発性脳腫瘍に分類されます。脳腫瘍の年間発症率は国立がん研究センターのデータによると10万人に対して3.5人とされ、患者数は10万人あたり10~15人とも言われます。このうち転移性は15%(1年間に1万人程度が発症)、原発性は85%とされています。

それぞれに、周囲の組織との境界が明瞭で外科的な手術によって全摘出が可能な良性と、がん細胞が周囲の細胞に浸み込むように広がって境界が不明瞭となり手術では完全摘出が難しい悪性に分かれます。

れぞれに治療法は異なってきますが、脳は全身の運動をはじめ、感覚、記憶、感情のコントロール、さらには生命の維持をつかさどる重要な器官であることから、腫瘍が発生した部位や腫瘍の大きさによって、日常生活に大きな支障を来したり、生命を脅かされたりする可能性もあります。

頭痛、嘔吐、感覚・言語障害…部位によって異なる症状

それでは次に、脳腫瘍の主な症状をみていきましょう。

症状には大別して、腫瘍の発生・増大によって頭蓋内の圧力が高まることに起因する「頭蓋内圧亢進(こうしん)症状」と、腫瘍自体が脳細胞を直接圧迫することによる「局所症状」、圧迫や障害によって神経細胞から興奮物質が放出されて起こる「けいれん発作」の3つの症状があります。

「頭蓋内圧亢進症状」の具体的な症状としては、慢性的な頭痛、原因不明の吐き気や嘔吐、視力低下が挙げられます。頭蓋内圧は横になって休むことで上昇する傾向にあるため、こうした症状は明け方や起床直後に出やすいと言われています。嘔吐はほとんどの場合が噴射状で、吐いてしまうと頭蓋内圧が下がるため、「あとはスッキリ」というケースもよくあります。ただ、頭蓋内圧がさらに高まると、意識障害や呼吸障害に陥る危険性もあります。

「局所症状」は腫瘍の発生部位によって異なります。

大脳の場合は、手足のしびれや麻痺、感覚障害、失語症などの言語障害、視野欠損や狭窄、記憶障害、ふらつきなどが挙げられます。

脳下垂体の場合は、ホルモンの分泌が異常になり、手足の先が大きくなる末端肥大や巨人症、女性の場合は無月経や生理不順になることがあります。

小脳や脳幹の場合は、手足は動くものの目的の場所に行けない「失調」やまっすぐ歩けない歩行障害、めまいや手足の震え、聴神経が圧迫された場合は難聴や耳鳴りといった症状が出ます。

精神活動に関連した部位に腫瘍ができて、何かをする意欲がわかなくなったり、物忘れがひどくなったりするケースもあります。

悪性の場合に起こりやすい「けいれん発作」には、体が硬直して意識を失う「大発作」、意識はあるものの片側の手足を無意識に動かしてしまう「小発作」、一点を見つめてほかの反応がなくなる「精神運動発作」など、いろいろなタイプがあります。

いずれの症状も、初期は何となくやり過ごしてしまえるため、腫瘍に気付かずに悪化してしまうことが多いようです。

悪性の大半は神経膠(こう)腫

脳腫瘍のうち悪性の代表例とされるのは、神経細胞を支えて栄養を供給している神経膠細胞(グリア細胞)ががん化する「神経膠腫」で、「グリオーマ」とも呼ばれます。脳腫瘍の約4分の1は神経膠腫で、原発性の30%を占めています。

腫瘍の部位や症状によってさらに細かく分類されますが、45歳から65歳の成人男性に多く発症し、最も悪性度が高い神経膠腫が「膠芽(こうが)腫(グリオブラストーマ)」です。正常な脳組織への浸潤が著しく、急速に増大します。

主に小児の小脳に発生する「髄芽(ずいが)腫」も神経膠腫の一種で悪性です。

一方、脳を包んでいる髄膜に発生する「髄膜腫」は、脳組織との境界が明瞭で、ほとんどが外科的手術での摘出が可能な良性(悪性は2~10%程度)です。40歳から50歳の成人に多く、女性の発症率は男性の2倍となっています。

腫瘍が大きくなるまでに時間がかかり、自覚症状がなかなか現れないのが特徴で、頭蓋内圧亢進症状やけいれん発作が起きて初めて気付くケースも少なくありません。前頭葉に発生すると認知症状、運動中枢に発生した場合は左右反対側の手足に運動障害が起き、視神経に近い部位の場合には視野狭窄や視力低下を引き起こします。

このほか、脳神経を取り巻いている刀のさやのような組織・神経鞘(しょう)に発生する「神経鞘腫」や脳下垂体にできてホルモン異常や視覚障害といった症状が出る「下垂体腺腫」、聴神経に発生して聴覚障害やめまいを引き起こす「聴神経腫瘍」などがあります。これらはいずれも良性です。

5年生存率は平均で75%

脳腫瘍が疑われた場合、最初に行うのは頭部CT(コンピューター断層撮影)やMRI(核磁気共鳴画像法)、MRA(磁気共鳴血管画像)などによる画像検査です。そのうえで、頭部血管造影検査やPET(陽電子放射断層撮影法)検査をします。腫瘍が想定される部位によってはホルモン検査や視力・視野検査、聴力検査なども並行して行い、最終的には腫瘍の組織を直接採取して病理検査する「生検」によって腫瘍の悪性・良性、腫瘍の種類を診断します。

良性と診断された場合、日常生活に支障を来す症状が出ていなければ経過観察としますが、多くの場合は手術で腫瘍を取り除きます。脳の果たしている役割や複雑な構造もあって、慎重さと丁寧さが要求される手術ですが、腫瘍を全部摘出できれば完治ということになります。腫瘍を全摘できずに増大してきた場合や再発した場合には再手術を行うか、「ガンマナイフ」と呼ばれる定位的放射線照射などによって治療します。

手術で腫瘍の完全摘出ができない悪性の場合は、ガンマナイフや分割照射が可能な定位的放射線照射「サイバーナイフ」による治療や、ニトロソウレア系のニムスチンやラニムスチンなど抗がん剤による化学療法、がんに有効なリンパ球を増殖させる免疫細胞療法、これらを組み合わせた治療法が用いられています。

最近では、サイクロトロン(円形加速器)やシンクロトロン(同期加速器)といった加速器で炭素の原子核を加速し、腫瘍にピンポイントで集中照射する重粒子線治療法も確立されつつあります。ガンマナイフやサイバーナイフによる放射線療法と違い、保険適用外であり、実施できる医療機関も限定されていますが、腫瘍周辺の正常な細胞に影響を及ぼすことがないというメリットもあります。

最も悪性である膠芽腫の5年生存率は10%程度、平均余命は1年半と言われます。たとえ手術に成功しても再発した場合の平均余命は6か月と深刻です。とはいえ、脳腫瘍全体でみると、5年生存率は75%で、ほかのがんに比べて高い数値になっています。

また、近年ではCT、MRIの普及や一部医療機関で行われている脳ドックにより、自覚症状が出ないうちに脳腫瘍が発見されるケースも増えています。

早期に発見できれば治療もしやすくなり、完治すれば普通の生活に戻ることができます。慢性的な頭痛を「いつもの頭痛」と決め付けず、吐き気やしびれといった症状を見逃さないことが大切です。脳腫瘍の専門科は脳神経外科ですが、しびれや脱力であれば神経内科、視力低下などの視覚障害なら眼科、片側だけの耳鳴りを含めた聴覚障害の場合は耳鼻科でも相談は可能です。「遺伝子の変異」としか原因がわからず、予防法もない脳腫瘍。「おかしいな」と思ったら早めに医療機関で検査することをお勧めします。

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