メディカルトピックス

寒暖の差が突然死を招く『ヒートショック』

今年は暖冬と言われていますが、それでも朝晩の冷えこみは日を追うごとに厳しくなってきています。外気が冷えると、屋内でも暖房をしていない場所は非常に寒く感じます。外出であれば防寒をしますが、室内の移動ではわざわざ着込まないことが多いのではないでしょうか。この室内での急激な寒暖の差が心臓・脳の血管や血液の流れに影響を及ぼすと、『突然死』することがあります。このような温度差によって起こる重大な症状を『ヒートショック』と呼びます。

※ ヒートショックとは

温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動する等によって起こる健康被害。失神、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞を起こす。特に冬場、また高齢者に多いのが特徴。

1.血圧の急激な変化が危ない!

寒い脱衣所で衣服を脱いだとき、急激に体表面全体の温度が10度程度下がると、身体に寒冷刺激が起きます。すると、血管が収縮し血圧が一気に上昇します。この血圧の急上昇が、心筋梗塞、脳卒中を起こすといわれています。

さらに、暖かい湯船につかると血管が拡張するため、急上昇した血圧が反対に急低下 してしまいます。この急激な血圧低下で一時的に脳内に血液が回らなくなり、失神を起こします。湯船で失神する事で意識がないまま溺れて亡くなるケースは少なくありません。

入浴中急死の典型な例です。東京都健康長寿医療センターの調査によると、入浴後6分で30~90mmHgも血圧が下がるとされています。

このように、血圧が急激に大きく変動してしまうことでヒートショックは起こります。 『ヒートショック』で起こる主な病気は、脳卒中、一過性脳虚血(失神)、心筋梗塞、不整脈などがあります。

2.ヒートショックの危険性が高い人は?

高齢者は特に注意が必要です。持病がなく日頃元気な人でも、体温を維持する生理機能の低下から温度の変化に対応しにくくなっています。高血圧の人は、血管拡張による低血圧症が起きやすく、意識消失を起こしやすいとされています。糖尿病・脂質異常症の人も動脈硬化が進みやすいためリスクが高まります。いずれも、急激な温度変化に身体が対応できにくい人です。また、もともと心臓・循環器系や脳の持病を持っている人も要注意です。

身体に寒冷刺激が加わることでストレスがかかり、予期せぬ重篤な症状が出ることがあります。

3.ヒートショック対策、していますか?

ヒートショックは起きないように対策することができます。脱衣所やトイレに暖房器具を設置したり、断熱材やカーテン・内窓を設置・有効活用したりすることで屋内での急激な温度差を回避します。

浴室の場合、「暖房器具までは置けない」という人も多いと思われます。浴槽のフタを外した状態でお湯を沸かす、高い位置においたシャワーでお湯を張ることで浴室内に湯気を立たせ室温をあげておく工夫などが有効です。入浴の時間帯は、なるべく日中の気温が上がっている時が良いでしょう。

食事直後1時間は食べ物を消化するために血流が変化し、脳に回る血流量が減ります。また、飲酒時は血管が拡張し、一時的に血圧が下がりやすくなっています。食事直後や飲酒時は入浴を控えてください。湯船の温度設定は41℃以下。寒いからといって高く設定すると湯船と浴室内の温度差が広がってしまうので本末転倒です。適温でゆっくり浸かることで身体の芯まで温まれば、寒さによるストレスも軽減されます。

トイレでは、『いきむ』行為で血圧が急上昇するため、室温調整をしておくにこしたことはありません。『いきむ』行為も出来るだけやらないようにしましょう。

4.交通事故による死亡の4倍の死亡数『ヒートショック』

東京都健康長寿医療センターの調査では、2011年の1年間でヒートショックに関連した入浴中の急死は約17,000人、と推測しています。その翌年の交通事故による死亡者数が4,611人だったため、交通事故の約4倍にあたります。入浴中の心肺停止件数を都道府県別にみると、少ない順に、沖縄県に次いで北海道、山梨県、青森県となっています。寒冷地が多く、外気温の低下から考えると不思議に思えます。その後の全国の住宅室温調査で、寒冷になる季節に対応した住宅内の温熱環境が整っているためと分かりました。このことからも住宅環境を工夫することによって入浴中の急死、突然死を予防できると言えます。

それと同時に、リスクが高くなってしまう病気(高血圧・糖尿病・脂質異常症)をお持ちの人は、良い状態にコントロールしておくことが大事です。

交通事故は注意していても偶然に巻き込まれてしまいますが、ヒートショックは注意次第で避けられます。この冬、快適な住宅環境で快適な生活を送ってください。

【参考】東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所
プレスリリース・研究成果 平成25年

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