メディカルトピックス

インフルエンザ予防接種は計画的に

日本では毎年、12月~3月頃までがインフルエンザシーズンと言われています。皆様もご記憶にあるように2009年には、A型/H1N1亜型インフルエンザウイルスのパンデミック(世界的に大流行すること)が起こりました。それ以降、日本でもインフルエンザに対しての関心が深まったように思います。最近では、個人だけでなく、行政や企業もインフルエンザ予防に取り組んでいます。

今年も例年通り、10月1日からインフルエンザワクチンの接種がスタートする予定です。予防をするためには流行してからでは遅いので、早め早めに接種のタイミングや方法をご検討ください。

1.インフルエンザの種類

インフルエンザウイルスにはA型・B型・C型があります。それぞれの特徴は下記となります。

【A型インフルエンザウイルス】

A型は大流行を起こしやすいウイルスです。A型にはHA(ヘマグルチニン・16種類)、NA(ノイラミニターゼ・9種類)の『亜型』と呼ばれる種類があり、この組み合わせによって記号表記されます。A型は「変異」を起こしやすいウイルスなので、病原性や毒性が今までとは全く違った型に置き換わることがあります。「変異」によっては想定されていたワクチンの型では対応できず、予防接種をしても“効かない”ということが起こります。2009年に起こったパンデミックは、A/H1N1型が「変異」したことによるもので、その当時『新型インフルエンザ』と呼ばれました。

【B型インフルエンザウイルス】

B型には、山形系統株とビクトリア系統株の2種類があります。「変異」は起こしますが、A型ほど変化しないので大流行には至りません。1~2年毎に流行を繰り返しています。流行時期はその年によっても違いますが、A型インフルエンザより少し遅れて流行します。消化器系の症状が起こりやすいと言われています。

【C型インフルエンザウイルス】

C型は、HE(ヘマグルチニン・エステラーゼ)の1種類のみ存在します。幼児期にかかるとその免疫力が持続するため、大人になってからはあまり感染しません。感染したとしても、症状が一般的な風邪程度ということもあり、インフルエンザ感染とは気づかないことの方が多いようです。流行も起きないため、騒がれることがありません。A型、B型が季節性インフルエンザに対し、C型は通年性のインフルエンザです。

2.東京都・過去のインフルエンザ罹患状況

下記の表は、東京都感染症情報センター インフルエンザの流行状況から、定点医療機関当たり患者報告数(2012年第36週~2015年第35週)を抜粋したものです。

[表1]
※『定点当たり』とは、医師会等の協力を得て、無作為に選定した医療機関(定点医療機関)からのみ報告された数。
※『○週』とは、1月の初めの週を第1週とし、12月末週が第52週。

この他、国立感染症研究所 厚生労働省結核感染症課(平成27年5月14日)発表の2014-2015シーズンインフルエンザの状況について、下記URLをご参照ください。

3.予防接種の推奨

[表1]からも分かるように、昨年は特異的にインフルエンザの流行が早まりましたが、毎年は1月中旬から2月初旬頃にピークを迎えます。インフルエンザの、潜伏期間と、予防接種後の免疫力の定着期間を考えて、ワクチンを接種する必要があります。

(1)インフルエンザの罹患

  1. 感染経路

    飛沫感染、接触感染

  2. 潜伏期間

    1~7日程度

  3. 症状

    ウイルスの種類にもよるが、初期は鼻汁やのどの痛み、微熱といった風邪症状が表れ、数日で高熱、倦怠感、関節痛、頭痛などが出現。
    伝染性が非常に強く、重症化しやすい。死に至ることもある。

  4. 感染期間

    発症1日前~発症後7日間(解熱後3日間)

  5. 予防

    手洗い、うがい、予防接種

(2)インフルエンザワクチンの接種方法と免疫効果

  1. 6カ月以上3歳未満の方 1回0.25mL 2回接種

  2. 3歳以上13歳未満の方 1回0.5mL 2回接種

  3. 13歳以上の方 1回0.5mL 1回接種

  4. 予防接種法に基づく定期接種対象の方

    • 65歳以上の方
    • 60~64歳で、心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を 極度に制限される方
    • 60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほ とんど不可能な方

ワクチンの有効性は、ワクチン株と流行株が一致したときという前提で、健康成人での調査でA型の有効性が80%前後、B型が50%前後という報告があります。免疫力は1回目の接種1~2週間後に上昇し始めます。2回目の接種1ヶ月後までにはピークに達し、3~4ヶ月後には徐々に低下していきます。したがって、ワクチンの効果が期待できるのは2回接種法では、接種後2週から3~6ヶ月までと考えられています。(北里第一三共株式会社 ワクチンの基礎知識 インフルエンザより)

免疫力は、年齢や体質、基礎疾患などに大きく影響されます。そのため接種方法で上記③・④の方でも、2回接種法が良い方がいらっしゃいます。過去の論文では、予防効果が1回接種法では64%、2回接種法では94%というデータもあります。2回接種法はブースター効果(追加免疫効果)【注1】を狙ったものです。インフルエンザワクチンの場合は、1回目接種から免疫が下がり始める前の4週間後くらいに2回目を接種するのが効果的と言われています。また、免疫の持続が2回接種法でも3~6ヶ月で長期に持続しないため、毎年の接種が必要です。逆に、インフルエンザワクチンにアレルギーをお持ちの方は、接種できないこともあります。接種の可否については、医師にご相談ください。

ワクチンを接種するタイミングの例としては、2回接種法の場合、1回目を10月後半~11月前半、2回目を11月後半~12月中がお勧めです。

【注1】予防接種で体内に抗体がある状態で、さらに抗体を付加することで血中抗体が前より、より速く高く上がる性質をいう。

(3)2015/2016シーズンのインフルエンザワクチン株決定

4価ワクチン
  •  A型/カリフォルニア/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09
  •  A型/スイス/スイス/9715293/2013(NIB-88)(H3N2)
  •  B型/プーケット/3073/2013(山形系統)
  •  B型/テキサス/2/2013(ビクトリア系統)

従来のワクチン製造株は、A/H1N1pdm09、A/H3N2、B型の3価が含まれていました。このうちB型株については、その年によって山形系統あるいはビクトリア系統のどちらか一方を選定していました。近年、B型は山形系統とビクトリア系統が混在し、流行が続いていたことを受け、遅ればせながら日本でも今シーズンから4価ワクチンが導入されることとなりました。

(4)インフルエンザ以外の感染症の流行にもインフルエンザワクチン接種は有効。

ヒト-ヒトの感染で流行する季節性インフルエンザウイルスに対応するために作られたワクチンは、直接的には含有する株にしか効きません。しかし、近年MERS(中東呼吸器症候群)、SARS(重症呼吸器症候群)、鳥インフルエンザといったような重症感染症が出現しています。これらの重症感染症に対しては、①重複感染を防ぐ、②ウイルスの交差による突然変異した新型感染症の発生予防という目的でワクチン接種は有効だと言われています。

(5)インフルエンザワクチン接種率の現状

[表2]
厚生労働省/予防接種情報/定期の予防接種実施者数より

【注2】2001年実施人員は、「予防接種法に基づくインフルエンザ予防接種の接種対象者数及び被接種 者数調査結果について」(2002年9月12日事務連絡)より計上。 対象人口は、「65歳以上の者」については総務省統計局推計人口(各年10月1日現在)から 求め、「60歳以上65歳未満の者であって、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能又はヒト免疫 不全ウイルスによる免疫の機能に障害を有する者として厚生労働省令で定める者」については、 2001年については「予防接種法に基づくインフルエンザ予防接種の接種対象者数及び被接種者 数調査結果について」(2002年9月12日事務連絡)により、2002年については保健所運営報 告・地域保健事業報告の「定期の予防接種対象者数」により求め全体を計上。

インフルエンザ予防接種は、1994年厚生省が実施する定期接種の項目から削除されてから実施数が極端に減りました。その後、実施率は50%くらいまで回復したものの、そこで横這いとなっています。国別の比較を見ても、先進国は軒並み60%を超えています。日本の接種率が低いことが分かります。わが国の予防接種に対する意識の向上がみられないのは残念です。

5.今年も計画的にワクチンを接種しましょう!

感染症は拡大すれば、社会全体に大きな影響を与えます。新型ウイルスによる感染症は、その予測も予防も出来ませんが、インフルエンザは流行に変化があったとしても毎年繰り返されるものなので、予測も予防も可能です。集団の予防意識は、個々の意識から始まります。今年も早めに、ご自分に合った予定を組みインフルエンザの予防接種を受けることをお勧めします。

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