メディカルトピックス

誰でも関わる「身近な認知症の基礎知識」

高齢化社会に伴い増え続ける認知症。認知症はすべての人にとって無縁ではありません。最近、認知症が関係した不幸なニュースを耳にしますが、決して他人事ではないのです。

1.増え続ける認知症患者

10年後には470万人強と推計

東京都健康長寿医療センター調査によると、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上となる10年後、認知症患者の人数は471万人に上るという推計が出ました。これは、およそ7人に1人認知症になる計算です。自分が認知症にならなくても高齢化社会では、認知症患者を看るのもまた高齢者ということになります。

図表1
【図表1】
平成24年度 老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等推進事業
認知症の早期発見,診断につながるアセスメントツールの開発に関する調査研究事業
『認知症の総合アセスメント』  地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
http://vexon-intnl.com/dasc/h24text.pdf

2.身近な事件・事故

行方不明者1万人!

認知症やその疑いがある人が、“徘徊(はいかい)”などで行方不明になる事故が増えており、その数は、年間およそ1万人に上ることが初めて明らかになりました。この内、亡くなった人は350人以上。未発見のままの人も200人を超えることが分かりました。

(『知られざる徘徊(はいかい)の実態』(NHKスペシャル))

認知症の83歳男性高速道路を逆走、衝突で死亡

道路交通法では、認知症と診断された者の運転免許取消しや診断した医師による任意の届出制度など法の改正を行ってきていますが、十分な取締ができておらず、このような事故がなくなりません。

認知症高齢者の男性が線路に入り死亡事故、遺族に損害賠償命令

鉄道会社が遺族らに損害賠償を求めた訴訟で、地裁は「死亡した男性は『認知症高齢者・自立度4』と診断されており、常に介護が必要な状態だったにも関わらず、見守りや徘徊防止の措置を講じていなかった。」として、当時85歳の同居妻と別居している長男に対し720万円の支払いを命じました。

介護疲れによる悲劇

高齢認知症患者を介護する配偶者や子供が介護疲れのあまり将来を悲観し無理心中をはかるケースが近年増えています。また認知症患者に対する虐待も社会問題となっています。もし介護者に認知症の正しい知識があれば、これらの悲劇は防げたかもしれません。


では認知症を予防するために、あるいは自身や家族が認知症になっても慌てないためにどういったことを知っておく必要があるのか、今回は認知症の基礎知識を掲載いたします。

3.認知症とは

「認知症」とは老いに伴う病気の一つです。さまざまな原因で脳の細胞が死んだり働きが悪くなったりして、記憶・判断力の障害などが起こり、社会生活や対人関係に支障が出てしまい、それがずっと続いている状態をいいます。

「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」は違う

年をとればだれでも、思い出したいことがすぐに思い出せなかったり、新しいことを覚えるのが困難になったりしますが、「認知症」は、このような「加齢によるもの忘れ」とは違います。体験したこと自体を忘れてしまったり、もの忘れの自覚がなかったりする場合は、認知症の可能性があります。


「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違い(一例)
加齢によるもの忘れ認知症によるもの忘れ
体験したこと一部を忘れる
例)朝ごはんのメニュー
すべてを忘れている
例)朝ごはんを食べたこと自体
もの忘れの自覚あるない
日常生活への支障ないある
症状の進行極めて徐々にしか進行しない進行する

4.認知症の症状

認知症には、「中核症状」と「行動・心理症状」の二つの症状があります。

(1)中核症状

中核症状とは、脳の神経細胞が死んでいくことによって直接発生する次のような症状で、周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなります。

1) 記憶障害
新しいことを記憶できず、ついさっき聞いたことさえ思い出せなくなります。自身の誕生日や昔の重要な出来事の記憶は保たれていることが多いですが、病気が進行すれば、以前覚えていたはずの記憶も失われていきます。
2) 時間や季節の感覚の障害
現在の年月や自分がどこにいるかなど基本的な状況を把握することができなくなり、迷子になったり遠くに歩いて行こうとしたりするようになります。
3) 理解・判断力の障害
思考スピードが低下して、二つ以上のことが重なると些細な変化に対応できず混乱を来すなどの症状が起こりやすくなります。例えば自動販売機や駅の自動改札・銀行ATMなどの前でまごついたりしてしまうようになります。
4) 実行機能障害
上記の結果、買い物で支払いができなくなる、着替え、入浴、掃除、料理ができなくなるなど、自分で計画を立てられない・予想外の変化にも柔軟に対応できないなど、物事をスムーズに進められず日常生活に支障をきたします。

(2)行動・心理症状

認知症の症状に加えもともと持っている性格や環境、人間関係など様々な要因がからみ合って起こる、抑うつ状態や妄想といった心理面・行動面の症状です。

(例)
  • やる気がなくなる。
  • 不安、イライラ、睡眠障害。
  • 能力の低下を自覚して引っ込み思案になる。
  • 今まで出来たことが上手く出来なくなって自信を失い抑うつ状態になる。
  • 自分がしまい忘れたことが「他人から物を盗まれた」という妄想。
  • 嫁が家の財産を狙っているといったオーバーな訴え、被害妄想。

このように認知症の症状、行動にはそれなりの理由が隠れていることも多く冷静な対応が必要です。

(3)認知症の初期は単なる物忘れと区別がつかないことが多い

認知症の初期は単なる物忘れと区別がつかないことが多く、家族も認知症と捉えず、「怒りっぽくなった」「だらしなくなった」などと単に性格が変わったと思いがちなのが現状です。

(4)「もしかしたら認知症では?」と疑ってかかることが重要

ご本人や家族がこういった状況になった時、むやみに叱りつけたり、あるいは落ち込んだりしないで、「もしかしたら認知症では?」と疑ってかかることが重要です。
認知症の初期サインは次のリンクを参考にして下さい。
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg8424.html

5.認知症の原因

認知症の疾患として、代表的なものはアルツハイマー型認知症脳血管性認知症、あるいはその混合型認知症です。

(1)アルツハイマー型認知症

認知症の最も多い原因です。
脳内で特殊なタンパク質の異常が起こり、脳の神経細胞が破壊され、脳の萎縮が起きてくる病気です。多くの場合、記憶障害から始まり徐々に進行していきます。呼吸器合併症などによって死に至ることもあります。最近は糖尿病や生活習慣との関連や中年期の運動療法の効果なども言われていたりしますが、はっきりとした原因は未だ分かっておらず、根治療法もありません。

(2)脳血管性認知症

脳梗塞や脳出血、脳動脈硬化などによって、一部の神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、神経細胞が死んだり神経のネットワークが壊れたりすることにより起きます。記憶障害や言語障害などが現れやすく、アルツハイマー型と比べて早いうちから歩行障害が出るようになります。あるとき急に悪化することがあります。脳血管性認知症は生活習慣病もベースになりある程度予防可能です。

(3)レビー小体型認知症

手の震えや小刻み歩行などのパーキンソン症状や幻視を伴う認知症です。症状の悪化・改善を繰り返すことがあります。

(4)前頭側頭型認知症

同じ行為を繰り返したり性格変化が起こったり、社会性の欠如などの問題行動が現れやすいです。

(5)その他

慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、薬物・アルコール依存など治療法があるものもあります。こういったタイプのものは早期発見、早期治療で軽快や治癒できることもあります。
また認知症と紛らわしい病気にやはり高齢者に多いうつ病があり、認知症と思ったらうつ病であったり、その逆もあったりします。

6.認知症の予防・治療

(1)早期発見・早期治療が重要

認知症の大部分を占めるアルツハイマー型や脳血管性認知症は、生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症など)との関連があるとされています。例えば、野菜・果物・魚介類の豊富な食事を心掛け、定期的な運動習慣を身に付けたり、と普段からの生活管理が認知症の予防につながることが分かってきました。
また、症状が軽い段階のうちに認知症であることに気づき、適切な治療を受ければ、薬で認知症の進行を遅らせたり、場合によっては症状を改善したりすることもできます。早期発見と早期治療によって、高い治療効果が期待できるのです。
認知症の早期発見・早期治療につなげるために、自分自身や家族・同僚、友人など周りの人について「もしかして認知症では?」と思われる症状に気づいたら、一人で悩まず、まずかかりつけ医に相談しましょう。当院でも『もの忘れ外来』で診察することができます。病院で新規におかかりになる場合には、『老年病内科』や『神経内科』が専門になります。

(2)ご家族が認知症になったら

認知症の人は理解力が落ちているものの、感情面はとても繊細です。失敗やできないことを責めても病状は悪化していくだけです。あたたかく見守り適切な援助を心がければ、自分でやれることも増えていくでしょう。認知症という病気を理解して、さりげなく自然で優しいサポートを心がけましょう。
家族が認知症と診断されたら(http://www.alzheimer.or.jp/?page_id=3109
(出典元:公益社団法人認知症の人と家族の会)

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